まだいたの?我が黒歴史とともに語る、迷惑な訪問販売体験記
ついに我が家も訪問販売デビューをしてしまいました
うちのマンションはオートロック・エントランスです。なので、最初からうちを目指してきたわけではなく、別の入居者に開けてもらったか、玄関先で入居者が通るタイミングに合わせて入ってきたのでしょう。
わたしがトイレから出るのと、と玄関のドアが開いたのはほぼ同時でした。その時のわたしといえば、キャミソール1枚に短パンという油断全開のあられもない姿(←寝巻きともいう)。やだ、もうお嫁にいけない。(←おい)
目の前にいたのは30代半ば前後の、スーツを着た女の人。
張りつくような笑顔にテンションの高い声、オーバーな身振り。間違いない、訪問販売(以下「訪販」)です。おまけにこのトークだと、ブツはおそらく子供用教材に違いない。ちょっとウチに来てどうするんですか。
36歳児と42歳児(←もうすぐ43)用の教材でもあるんですか。
シ「ウチじゃないです」
シ「どの号に子供がいるか、という質問なら答えられませんよ」
シ「わたし、同業だったんで」
同業と聞いて、その人は慌てて帰っていきました。この追い出し文句、意外と効きますね。
それにしても、嗚呼、できることなら自分史から消し去ってしまいたい。あの悪徳と名高い某訪販会社にいた黒歴史。といっても15年前に1ヶ月いただけですが。先ほどとほぼ同じトークを、わたしも血ヘド吐くんじゃないかってほど練習させられました。もしかしたら同じ会社かその系列かもしれませんね。あぁ、名刺だけでももらっておけばよかった(笑)。
言い訳の時間~よりによってそんな会社に入った理由 was 無知
大学を卒業して地元の出版社で5年勤めたあと、初めての転職先がそこでした。簡単な面接と、面接官の前で珍妙な小芝居をする「適性テスト」を受ければ、採用率はほぼ100%。ただし、1年以内の離職率も90%(←当時としてはあながち間違ってないと思いますが/笑)。
「出版」の社名を掲げたブラックの悪名高き訪販会社…といえばピンとくる方も多いのではないでしょうか。わたしは「編集部」を希望しましたが、最初はどこを希望しようが営業一択。それも乳児から高校生までを対象とした各種教育教材の飛び込み営業という一番過酷なもの。もちろんハロワの求人票や情報誌に、そんな文言は一切ありません。
無知でした。聞けば学校でも「入ってはいけない企業」リストに名を連ねているというではありませんか。しかし既に1年留年し、2回目の4年生時もギリギリまで単位取得に追われて就職活動どころじゃない当時のわたしには知る由もありませんでした。もしもタイムマシンがあったなら、あの頃の自分をぶん殴って己の無知を諭したい。ドラえもんドコー?
ここがおかしい!ブラック訪販の「必勝マニュアル」(笑)
わたしを含めた新入社員は25人。初出社翌日からさっそく5人ほど消えていましたが、最初のミッションはいわゆる「販売トーク」の完全マスターです。これがツッコミどころ満載。もう随分昔の話なのに今でも忘れられない、トンデモすぎるポイントを何点かご紹介します。
インターホンは使わず、大きな声で挨拶しながらドアを開けるべし
先日の田中(仮)さんも、このテできました。いきなり「不法侵入のススメ」です。とにかく大きな声で挨拶と同時にドアに手を掛け、施錠されていれば初めてインターホン。
案外、日中在宅だと鍵をかけてないご家庭って多いんですよね。うちとか。
ちなみに玄関の他に別に門がある場合は、勝手に手を廻して門のつがいを外してから玄関まで侵入することが推奨されていました。
会社の名前を最初から名乗るべからず
これはもちろん、名乗ったらそこで試合終了、即刻締め出されるのが目に見えてるからです。どうとでもとれる曖昧な表現は、もしかしたら訪販業界から生まれたのかもしれませんね。
とか といった、会社の名前が出てくるのはある程度トークを聞いてもらってからです。
そこまで話に付き合ってくれるお母さんなんて稀ですが。
まずは玄関先を占拠するべし
いろんな資料を広げて使うので、とにかく玄関スペースを掌握することが肝心です。そこで、なるだけ早い段階、かつ、自然なタイミングで「言い切り」で促す。
じゃダメなんです(心理学的な効果がある…らしい)。一度座ってしまったら最後、1~2時間は時間をドブに捨てることを覚悟しましょう。
会話の中では「第三者の話」を織り交ぜ、フル活用で反復するべし
既に断られてたり、これから行くターゲットの名前を使って、さも「始めてないのはお宅だけですよ」感を匂わせてるだけなんです。知り合いの子供の名前が出てくると、揺らぎそうになるのが親心。もちろんこれは「虚偽の告知」にあたる立派な違法行為なのですが、そんなこと気にしてたら飛び込み営業なんてやってられません。
を連呼。実際は「○○ちゃん(子供)のために頑張って下さい!」で即決すべし
値段の説明(←バカみたいに高い)まで終わったら、このセリフとともに契約書とボールペンを差し出します。散々将来への不安感を煽ったあとで、子供のため、と言われると、判断能力を失ってなし崩し的にサインをしてしまうお母さんがいるのです。稀ですが。
尤も、大抵のお母さんは「主人と相談してから…」等、慎重な姿勢をみせますが、そんなの待ってくれません。 等、とにかく即決を迫ります。
これは、再訪問による時間のロスを減らすことと、あとひと押しの段階までこぎ着けたとしても、時間が経つにつれてターゲットの購買意欲が失われていくのを防ぐため。
必死ですね。
名簿やリストの存在は必ず確認・入手せよ
現在は個人情報保護の面からほぼ不可能だとは思いますが、地図を広げて同級生のいる家を教えてもらうなどして情報を常に更新し、質の高いリストを再構築するのが目的です。いざとなったら、道行くターゲット(子供)の集団に直接聞いたり、わざと対象外の家を訪問して(主に高齢者宅や話好きそうなおばさん宅)、聞き込みを徹底的にするのもテ。同じエリアを担当するのはせいぜい3日ほどなので、行き掛けの駄賃とばかりに聞きまくっていた人もいるようです。
まとめ・手口がわかれば防御の仕方もわかる、と思う
まだまだ細かいテクニック(笑)があったのですが、かなり昔のことなのでうろ覚えなところもあり、さすがに今はだいぶソフトに変わっていると思うのでこの辺で。わたしはこれらのマニュアルがどうしても実践できなくて、次のミッション=先輩の同行(見学)をしている研修中に心が折れて辞めました。
この頃にしろ今にしろ、大抵のお母さんは戸締まりを怠らず、インターホン越しにピシャッと「いらない、もう来るな」と言える方がほとんどだと思いますが、中にはそうでない人も確実にいるんです。鍵を掛ける習慣も、住んでいる地域や環境によってはまちまちかもしれません。と、さりげなく自分の過失をフォロー(笑)
また、自分がしっかりしていているつもりでも、当事者以外の人の口には戸を立てられません。特に子供さんには今からもう「ほーもんはんばい」という言葉と意味を教えておいたほうがいいかもしれませんね。純真で真っ直ぐ(だといいですね)な美点に付け込まれて、家まで連れてきてしまいました、なんてことになったら目も当てられません。
…何か珍しく真面目な記事になってしまいました。
自分が被害者だと熱の入りようも違いますね。
次からはまた「メンドクサイ」の連呼、再開します。