俺とお前と大五郎、酒と干物とアルコール依存症

今回は、前回さりげなく告白した(色付き太字でさりげなくも何もアンタ)「アルコール依存症」(以降「ア症」)について。わたしは今から6年前にそう診断され、1年強専門医院で治療を受けたものの、その方法や効果に諸々思うところがあり、最終的に治療放棄⇒再飲酒で今に至ります。
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我が家の「酒神様」。日々お供えをして、つつがない飲酒ライフをお祈りしてるw

お酒を止めるのを拒絶しただけでア症とスピード診断されました

6年前の某日、四肢の不調を訴えて病院に行き、血液検査したらγ-GTPが276(平均値50前後以下)という驚きの数値を叩き出しました。γ-GTPとは、平たく言うと「(お酒を分解する)肝臓等の細胞がどのくらいイカれてるか」の標値で、平均値を上回れば要注意、100を超えたら要治療。お酒の他、内臓脂肪の有無でも数値が上下します。

しかし、これだけでア症と断定されるわけではないし、他項目の数値が正常であればγ-GTPの数値単体はさほど気にする必要はありません(500超えてもピンシャンしている人を、わたしは何人も知っています)。注目されるのは、「お酒の摂取量」「お酒との精神的な距離」、そして「健康に対する姿勢」です。さて、わたしの場合。

医「お酒、毎日呑むの?何をどれくらい呑むの?」
シ「毎日焼酎をロックで5杯くらい呑みます」

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医「…お酒、止めましょう」
シ「無理です」(←脊髄反射)

このやり取りだけで、お医者さんは「あっ…察し」なわけで。ここからが早い。こうも清々しく拒否されたのでは内科じゃ面倒見切れないということで精神科へ、そこで上記の問答をもう一度⇒あっという間にアルコール性の末梢神経炎と断定され、ベルトコンベア式にア症専門の病院に廻されました。

「好きで呑んでる」「誰にも迷惑かけてない」…じゃ納得してくれない理由

そこで初めて受けたのが、その筋では定番のア症スクリーニングテスト。今は男性と女性分けられているんですね。わたしが掛かった頃は区別がなく、男性寄りの項目だった気がします。

新久里浜式アルコール症スクリーニングテスト:男性版(KAST-M)
新久里浜式アルコール症スクリーニングテスト:女性版(KAST-F)

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せっかくなので、今式の女性用でやってみたのがコチラ。当時は3にも○がついていましたが、それを抜きにしてもいまだにア症疑惑濃厚と出ました(笑)。というか、2の項目なんて酒呑みならほぼ「はい」なのでは(医者要らずの人はさておき)。だって、どこの世界に「ガンガンいこうぜ」とコマンドを出してくれる医者がいるんですか。

次に、「なぜ日常的に大量飲酒をするようになったのか」について、徹底的な聞き取りがなされます。誰もが最初は呑み会だけ、正月だけ等の「機会飲酒」が始まりだったはず。それが何らかのきっかけで頻度が増え、やがて毎日呑むようになり、アルコールの耐性が付き、今までの量じゃ酔えなくなるため杯を重ねるわけです。その要因が何であるかを明確にしないことには治療方針が定まらず、効果も望めないというのが医療側の言い分。

これには非常に困りました。「お酒が好きだから」「食う、寝ると同じものだから」じゃ納得してくれないからです。それは「お酒が呑みたいという欲求がそう思わせている錯覚」と判断され、何か必ずあるはずだ、と何故か幼少期まで遡って様々な事を掘り返されました。家庭も仕事もプライベートも円満な人間が、酒に溺れてこんなところに来るわけがない、みたいな。
そんなことを言われましても。

そんな押し問答を繰り返し、結論が出たら(疲れたので「仕事のストレス」と適当に答えたら、何か喜々としてカルテに書き込んでた。言わされた気がしてならない…)、次なるステージはいよいよ断酒の誓いです。「禁酒」ではなく「断酒」、これは一生お酒を断つことを意味し、ア症から立ち直る唯一の手段。
さぁ、ゴールのないマラソンの始まりです。

「断酒、通院、自助会」の三本柱で進められる治療には相性がある

治療の肝は3つ。断酒は先に述べた通り。通院はそのまんま。最後の「自助会」とは「断酒会」「AA(アルコホーリクス・アノニマス)」とも言われ、同じ悩みを抱える本人、またはそれを取り巻く人たちが集まり、情報交換や交流をする場です。ここへの積極的な参加が断酒に有効であるということは実際に証明されているようなのですが、わたしには絶望的に合いませんでした。

ミーティング初日に10人くらいの輪になって、一人一人「何故お酒に依存するようになったか」等を発表するのですが、ドラマ並にヘビー過ぎて貰い鬱になりそうでした。すぐ担当医に「アレ無理、絶対無理」と懇願し、代わりに出てきたのが「抗酒薬」。これを服用してお酒を呑むと、ものすごいスケールのでかい二日酔いがやってきます。

わたしにはこれが一番効果てきめんでした。処方された初日にうっかり、家に帰って息を吸って吐くようにお酒呑んだから。マーライオンのように全てを吐き出してもなおこみ上げる吐き気。まる2日トイレから離れられなくて、トイレと愛が芽生えるんじゃないかと思ったくらいです。
抗酒薬に酒なんて、本当は禁忌中の禁忌なのですが、この恐怖体験がきっちりトラウマになってくれたおかげでわたしの断酒は1年3ヶ月続きました。※絶対真似しないで下さい

断酒生活の終焉は担当医からの「ア症じゃなかったんじゃない?」発言

さて、当初わたしが解決したかった四肢の痛み。アルコールによる弊害とされたからには、呑まないことで回復するはずでした。というか、そういうご褒美がなきゃ正直やってられません。が、一向に効果が現れない。γ-GTPだって200前後から変わらないとかどういうこと?
と、担当医にぶつけたらですよ。返ってきた言葉が「最初からア症じゃない別の疾患だったんじゃないの?」ときたもんだ、つまりアレか。お酒ちゃん悪くない、ということでよろしいか。

「勿論、お酒は止めるに越したことはないですよ。ここはそういう所だから」
答えになってないし。
「シーナさんだって止めようと思ってここに来たんでしょ?」
いいえ、ベルトコンベアに乗ってたら勝手に運ばれたんです。

何てこと、唐突に断酒を続ける理由がなくなってしまいました。抗酒薬は飲酒欲求を消すものではありません。つまり、お酒のせいでなければ呑む気満々。
10日間ほど空けて薬の効果が無くなるのを待ち、飲酒を再開したらあとは元の木阿弥です。ただ、さすがにロックは体がついていかなくなり、水割りにシフトしましたが。
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レモン汁入れてビタミン摂取した気。これぞ「焼け石に水」(笑)。

そして今に至るわけですが、思えば毎日お冷みたいなロックを5杯も呑んで、既に回復不能なほど神経がやられていたのかもしれません。そう考えると少し早まったかなとも思います。しかし、お酒を再開した今の方がまだ体調いいんだから、やっぱりお酒ちゃん悪くないと信じて。
結局、わたしはア症だったのか誤診だったのか宙ぶらりんなまま治療を放棄してしまいましたが、こういう思考に至るあたり間違いなくア症だな、としみじみ感じております。

余談ですが、その後別の内科医の検査でγ-GTPの数値は、「肝臓で生成された胆汁が通る管がドロドロで流れが悪いため」と診断され、流れをよくする薬を処方してもらって治療を続けています。あと栄養失調。心当たりのある方はその方面も疑ってみてはいかがでしょうか。
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この夏の検査で、生まれて初めてγ-GTPが100を切りました。万歳\(^o^)/

酒呑みは量に関わりなく、誰もが「ア症」の因子を持っている

以上、長々とした体験談になりました。普段からお酒に馴染みのない方には眠たいだけの内容ですが、酒呑みの方はちょっとドキッとしたのではないでしょうか。
ここまでで、「オレ絶対病院イカネ」とか「これから聞かれても少なめに答えておこう」と思った酒呑みさんは、少なからずア症の疑いがあります。というか、極論ながら「酒呑み」は誰もがア症の因子を持っていると思うのです。

ア症といっても様々で、誰もが昼間からワンカップ煽ってグズグズ煮えているわけではありません。誰もが酒を呑むと豹変し、周囲に狼藉を働いたり盗んだバイクで走り出して、飲酒運転で警察のお世話になるわけでもありません。お酒が切れると、指が震えたり妖精さんが見えるわけでも、勿論ありません。

わたしとて、お酒が原因で人と摩擦を起こしたり、警察のお世話になったり記憶喪失になったり、見えてはいけない何かが見えた経験はありません。(結婚してから)休肝日も週3日と、酒呑みにしちゃ上等です。たまに破りますが。ダメだろ。
また、わたしの周りには、箱買い(24本)したビールが3日で消える実家をはじめ、どう見てもア症確定な面々ばかりなのですが、彼らが犯罪や暴力・迷惑行為をしたり周囲を巻き込んだことは、やはりありません。

「自己コントロール不全」や「絶え間ない酒への渇望感」などに苦しむア症患者が居る一方で、社会と折り合いをつけながら誰にも迷惑を掛けず、何なら休肝日だって設けている、ただ人より呑む量が多かったり長時間ダラダラ呑んでいたり…要は単なる「大酒呑み」(大、とも限りません)も確実に居るんです。というか、圧倒的にこっちの方が多い。ア症は自覚症状がなく、あっても病院に行かず、行って突きつけられれば酒呑みたさに思わず否定の言葉が口を突いてしまうものです。「否認の病」と言われる所以ですね。

世の酒呑みの皆さんに、現役バリバリの自分が言えることは何もありませんが、今回の告白(笑)にふと目を留め、改めてお酒について考えてみる機会になればいいな、とは思います。

※参考・テスト引用-厚生労働省・みんなのメンタルヘルス総合サイト/アルコール依存症の項より

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