会社に損害を与えた社員への損害賠償請求
従業員が会社の備品を壊したり、横領などの不正を行うことで、会社に損害を与えることがあります。
民法上、故意や過失により人に損害を与えた場合、その損害額を賠償する義務を負います。
従業員から被った損害についても、会社が損害賠償を請求することができると考えられます。
通常業務による損害は会社の責任
しかし、ここで問題となるのが、その損害が発生した時の状況です。
従業員が、その会社の通常の業務を行う上で会社に与えた損害は、会社が負担すべきものであり、従業員に責任は認められません。
業務中に従業員が機械を壊してしまったという事例を考えてみましょう。
もし、その機械が老朽化していて、通常の使用により故障した場合は、従業員には責任はありません。
ミスにより壊れてしまった場合も、業務上想定できる範囲のミスであれば請求は困難です。
従業員に損害賠償ができるのは、その従業員に重大な過失や故意があった場合です。
この線引きについては、損害賠償請求でしばしば問題になるところです。
不正による損害であれば請求できる
横領等の不正の場合は、故意性が明らかであるため、全額が請求できると考えられます。
しかしこの場合も、それが通常業務で想定することのできる損害であるか否かについて問題になることがあります。
たとえば、経費の使い方に関する内規、またお金の管理がずさんで、「無駄遣い」が常態化している場合は、損害額の線引きが難しくなります。
従業員の不正による損害であると主張するためには、不法行為の証拠を揃えておく必要があります。
従業員の不法行為は早期発見が基本
経理の管理がずさんな場合、横領そのものを発見するのも遅くなり、被害額が大きくなってしまうことにも注意すべきです。
額が大きくなると、損害賠償の請求権はあっても、現実的に回収が難しくなってしまいます。
その従業員が一度に損害賠償を支払えない場合、分割払いや、入社時に契約した保証人への請求などで対応することになりますが、泣き寝入りになってしまう事例も多いようです。
最も大切なことは、普段から経理、現金管理などの体制を整備しておくこと。
これが不正の早期発見、また損害賠償請求を検討する際に証拠を確保することにつながります。