従業員素行調査に違法性はありますか?
私は小さな会社を経営しているのですが、社内に不正を行っている社員がいるのではないかと疑っています。
従業員の素行調査をして不正があるかどうかを知りたいと思っているのですが、個人情報保護法など、法令違反になるのではないかと心配です。
従業員の素行調査に違法性はないのでしょうか。
まず、個人情報保護法については、従業員に対する不正の調査とはほとんど無関係です。
とはいえ、ほかの法令で調査の手法などが違法性を問われる危険性はゼロではありません。
「不正の存在を解明する」という目的に合った、適正な調査を行いましょう。
個人情報保護法は名簿の管理に関する法律
個人情報保護法は、顧客情報など、大量の個人データをもっている「個人情報取扱事業者」を対象とするもので、個人情報の管理・利用に関して規正し、情報漏えいによる個人のプライバシー被害を防ぐための法律です。
ご相談のケースのように、事業者が特定の従業員の不正行為の有無を調べる、といった事例では、同法に違反することは考えにくいでしょう。
調査手法により違法性を帯びることも
しかし、個人の行動を調べる際には、刑法などの法令を遵守して行わなければならないのは言うまでもありません。
探偵・興信所に委託して行う尾行調査では、他人の家屋に勝手に侵入したり、隠しカメラを取り付けたり、社員の個人のパソコンに不正侵入したり、といった事例で、刑事事件に発展することがあります。
それらの行為を依頼した人にも責任が及ぶ場合もありますので、十分に注意すべきです。
目的に適合した最小限の調査を
また、刑事罰が課されるような事例ではなくても、社員がプライベートを調べられたことによる精神的苦痛を訴え、民事事件として損害賠償を請求されることも考えられます。
また、会社が被った損害の賠償を従業員に請求する場合などで、争いが裁判に持ち込まれた場合も、不正の証拠が適法な方法で取得したものであるかどうかが問われます。
どんなに有力な証拠であっても、合法的に手に入れたものでなければ認められないのです。
社内不正に関して個人の素行調査を行う際は、まず不正を疑うべき理由があり、それを調べるために適法で、最小限の方法で調査を行った、ということを説明できるようにしておく必要があるでしょう。