債権回収も公示送達できる?
『公示送達』を行えば、たとえ相手の行方がわからないときでも、裁判を起こすことができます。
では、公示送達は債権回収においても役立てることができるのでしょうか?
債権回収と公示送達の関係
そもそも『公示送達』とは、訴訟を起こすための手続きです。
一方で、債権回収においては『裁判上の請求』を行うことで、債権の時効を中断することができる、となっています。
ここで重要なのは、「裁判上の請求」には訴訟も含まれるということです。
「公示送達を行えば、行方不明の相手でも訴訟を起こせる」
「訴訟を起こせば、債権の時効は止まる」
これらを合わせて考えると、債権回収において公示送達とは、「行方不明の相手から債務を回収するためになくてはならない手段」であるといえるでしょう。
金銭債権なら、支払督促か少額訴訟で解決
一口に「訴訟」と言っても色々な手段がありますが、債権回収でよく用いられる手段としては『支払督促』、『少額訴訟』があります。
支払督促とは、「自分に代わって裁判所から債務者に督促状を出してもらう」方法です。
督促から2週間以内に相手が異議を申し立てない場合には、確定判決と同様に強制執行を行うことができます。
少額訴訟は、請求金額が60万円以下の場合にとることができる方法です。
1日で判決が出るため、裁判にかける労力が少なくて済むという利点があります。
支払督促と少額訴訟の共通点は、「単純な金銭債権の請求」でのみ利用することができます。
請求金額や債務の内容について債務者と争いがある場合には用いることはできません。
公示送達は必ず『通常訴訟』になる
ここで問題になるのが、「支払督促や少額訴訟では、公示送達はできない」ということです。
最初に支払督促や少額訴訟をしようとしていて、あとで相手が行方不明になってしまった場合には、通常訴訟に切り替える手続きを行わなくてはなりません。
そうなると、通常訴訟では相手側不在の裁判となります。
相手から反論される恐れはないので、裁判自体は有利に進むと予想されます。
しかし、裁判の勝敗と債権回収がうまくいくかどうかは別問題。
債務者の行方がわからないままでも貸したお金を取り返せる目処が立つかどうか、予めよく考えておきましょう。